コップ

机の上にほったらかしのコップ。
中身は飲み干してしまったのか、
空気の中に逃げ出してしまったのか、
もう誰も知ってはいない。

中をのぞいてみたところで
きっとホコリが積もっているだけの
ほったらかしのコップ。
もうだれも使ってはいない部屋に
放置されたままのコップ。

あの人はここに何を注いでいたんだろう。
いつも決まった時間に机の前に座って
書類なんかを読みながら、コップを目の前に
退屈を楽しんでいた人がいるはずなのに。
もうこの場所には誰の記憶も見つかりはしない。
それにコップがホコリの下に何を隠してるかなんて
かける言葉のない僕には知る由も無いから。

このコップが使われることなど二度と無いだろう。
でもこのまま朽ち果てていくことを気にも留めず
今日もまた平然とそこに置かれたまま
窓の外から漏れてくる微かな日の光を浴びて
退屈そうに灰色の風景に溶け込んでいる。


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By GloomyWind 2003/4/2
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